日本は長時間労働大国で残業ありきの国だ。一方で、Gigazine の8月9日の記事「急速に進化し続けるテクノロジーは人間から仕事を奪ってしまうのか」では、マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクールのErik Brynjolfsson教授および彼の共同執筆者であるAndrew McAfee氏の「How Technology is Destoroying Jobs」という記事を紹介しているが、日本の現状と対比してみると面白い。

近年全世界で問題になりつつある就業率低下の背景に、産業ロボット工学から自動翻訳サービスまで幅広い分野において進歩し続けるコンピューター技術があると主張しています。次々と新しくなるテクノロジーを受け入れる産業は、製造・小売り・事務業だけにとどまらず、金融・法律に関する業種や医療・教育などのサービスにおいても最新技術を積極的に採用しています。

アメリカでは、確かに2000年初頭から生産性は上昇し続けているものの、雇用の方は成長をやめて低下し始めているという状態になっている。ただし、テクノロジーの進化が雇用の低下の原因になっていることについては、否定的な意見も多いようで、機械によって労働者が仕事を失っているという証拠を見つけるのはとても困難だそうだ。

2012年にAmazonに買収されたスタートアップ企業のKiva Systems はロボットの開発をする会社で、そのロボットを使えば通常の工場の4倍の量の注文を処理可能になるそうだ。そのKivaではロボットの販売好調に伴い、人員を増加させているが、そのほとんどがロボットのアルゴリズムを担当するソフトウェア・エンジニアだそうだ。

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このような結果、アメリカでは左の図のように2000年から2010年で最も大きく伸びた職業はソフトウェアエンジニアだった。そして、以前の記事で紹介したようにソフトウェアエンジニアは、2010年から2020年にかけても大きく成長する職業だといわれている。

一方、日本では、今でも プロジェクトマネージャー > システムエンジニア > プログラマー という身分制度があって、プログラミングは下賤な作業と思われている。そういうことで、設計もプログラムもするソフトウェアエンジニアという言葉自体が普及していない。そして、さらにはIT技術者は3Kの職業で将来絶滅するとまでいわれている。

結局、アメリカが、コンピュータ技術を取り入れることで生産性をあげたが、そういう欧米の企業に対して日本の企業では長時間労働をさせることによって競争力を維持しようとしているようだ。欧米では失業が問題になり、日本では長時間労働や過労死が問題になっているのは、そういう理由だろう。世界中どこでも労働者には厳しい時代だ。

ただし、特殊合計出生率が、アメリカ2.1、イギリス1.94に対して日本は1.39で、長期的にみると日本は子供を育てられなくなっている社会だからこのまままだと敗戦は確実だ。コンピュータ技術に対して長時間労働という禁じ手の武器で対抗しようとするのは、第2次世界大戦での戦いを思い出させる。